2011年9月3日土曜日

世界最高の税務法律事務所はGE?企業課税の深謀


誰も米国の企業課税に満足していない。では、主要な企業は税金を払いすぎているだろうか、それともあまり払っていないだろうか。
Q企業はどのくらいの税金を支払うのか
A理論上、最高税率は35パーセントであり、世界最高の税率の一つである。実際には、ほとんどのアメリカの会社は減税や抜け穴を利用し、それよりは はるかに税金を払わないで済んでいる。調査会社キャピタルアイキュー社によると、S&P500株価指数に採用されている500社の大企業のうち 115社は過去5年間に税金を20パーセント未満の課税率でしか支払っておらず、うち約40社の税率は10パーセント未満である。例えばボーイングは過去 5年間利益に対して税金を4.5パーセントしか支払っておらず、サウスウェスト航空は6.3パーセント、Yahooは7パーセントしか支払っていない。伝 えられるところによれば、アメリカ最大の企業の1つであるゼネラル・エレクトリック社は、2010年の全世界利益の142億ドルに関し、連邦税をほぼ支払 わずともよいとされている。

Qいつもこんな状況だったのか
Aそうではない。こうした企業は、最近数十年間に複雑な税法に追加された、諸々の抜け穴と控除の結果として、以前に比べて、アメリカの税収に占める 割合がはるかに小さくなっている。1950年代には、アメリカ政府は、全連邦の収入の30パーセントを事業税から徴収していた。昨年には、それはちょうど 9パーセントとなった。個人納税者は、ずっと多くの税を支払っている。昨年には、企業の1910億ドルに対し、個人は8990億ドルであった。「これは愛 国的でなく、そして、不公平です、そして、我々はそれに我慢できません。」と、グリーンライニング研究所のサミュエル・カンは言った。グリーン ライニング研究所は、最近、法人事業税の租税回避に関する報告書を発表した。「議会は、これらの金持ち企業から、10セントさえも増税することなく、財政 赤字削減のために、老人医療健康保険制度、社会保障と、食品安全と、教育と、健康予算を削減しようとしています。」

Qこれらの企業は、どのように本来の税金を支払うのを回避しているのか
Aロビイストと弁護士によって創り出された、諸々の控除、不正会計、および租税回避策の複合による手法である。人気が上がっている戦略としては、税 率の低い国の海外現地法人に雇用、業務および利益を移動させることである。アメリカ企業がこのようにしてオフショアに1兆5000億ドル以上を留保したと 見積もられている。企業は、もしアメリカ政府が、国内に戻す資金に対する課税税率を、35パーセントから約5パーセントまで減免する一時的な期間、いわゆ る「リパトリエーション・ホリデー」に同意するならば、利益を本国に持ち帰り、雇用を創出し、投資しても構わないと思っていると主張する。しかし、懐疑論 者は、前回2004年に行われたリパトリエーション・ホリデーの間、アメリカ企業が本国に持ち帰った3000億ドルのうちの92パーセントが、より多くの 雇用を創り出すためではなく、自社株買いと株主配当支払いに使われたと指摘する。

Q海外では税率は低いのか
Aその通りである。アメリカの連邦の法人税率は日本に次いで世界で2番目に高い。少なくとも名目上は、アメリカの税率は、バーミューダーやケイマン 諸島のような無税のタックスヘイブンは言うまでもないとして、アイルランド(12.5パーセント)、ドイツ(15.8パーセント)、およびカナダ (16.5パーセント)などの国より数倍高い。しかし、抜け穴により、実際には、ほとんどのアメリカ企業が他の先進工業国の平均と同程度しか支払っていな い。それは、約25パーセントである。「企業が払う実効税率は、実際は控除により大いに下がり、我々は税率では中間的な集団にあります。」と、無党派の税 制センターのロバートン・ウィリアムズは言う。法人事業税のGDPに対する割合を計算すると、アメリカの2.1%は、日本の2.4%、カナダの2.5%、 韓国の3.7%など、経済協力開発機構33カ国の大部分と比べ、低いものである。

Qなぜ改革が叫ばれるのか
Aリベラル派も保守派も、法人事業税の規定を抜本的に改訂、改良できると信じている。 「アメリカのシステムは、公正さについても効率性についても、本当に低い点しか取れません。」と、マサチューセッツ工科大学会計学教授ミシェル・ハンロン は言う。アメリカ財界のリーダーは、35パーセントの税率は、支払う税率を下げるために非生産的な戦略に従事させ、ビジネスと雇用を海外に移転する結果に なるため、競争力に有害であるという。左派の評論家は、連邦政府が、赤字を削減するため、より多くの収入を必要としており、法人事業税の抜け穴を閉じるの が必要であると主張して批判しており、今年だけでこうした抜け穴により政府が失った税収は1020億ドルに上るとしている。

Qどんな変更が可能だろうか
A昨年のオバマ大統領の赤字削減委員会では、ほとんどの抜け穴を閉じると同時に、法人税率を23%まで引き下げることを推奨した。一般に、財界の リーダーはその意見を支持する。例えば、ゼネラル・エレクトリック社の最高経営責任者ジェフ・イムメルトは、税法が簡素化され、税率が低下するならば、自 社は心底、抜け穴の除去を受け入れると先週のスピーチで述べた。「我々は今日、現場を見ずとも、ドイツ、日本またはイギリスの法人事業税政策を受け入れて いるのです。」と、イムメルトは言った。しかし、税制改革の問題を囲む政局は、非常に分断されたままであるため、規定が実際に改定されるまでには数年、つ まり2012年の大統領選の終わりまで、かかるかもしれない。「ボールは回転し始めました。」と、米国商工会議所の主たる税務顧問弁護士であるキャロライ ン・ハリスは言う。しかし、「もし税制改革が簡単であるなら、我々は既にそれを実現しているでしょう。」と付け加えた。

世界最高の税務法律事務所'
ゼネラル・エレクトリック社は、どのように、連邦税をほとんどあるいは全く支払わないですんでいるのだろうか。それは、しばしば世界最高の税務法律 事務所と言われる、約975人の弁護士と会計士からなる税務部を抱えているためだ。税務部は、元財務省の職員で蝶ネクタイを好むジョン・サミュエルズに よって率いられている。税務部は、過去20年間の間で、その規模が3倍に拡張された。彼らのすべて関心事は企業の課税額を減少させることにある。税務部 は、GEが雇った何十人もの元IRS職員と議会の税務起草委員会の元従業員によって構成されており、その巧みな会計は広く賞賛されている。会社の擁護者 は、それは単に合法的な減税方法を見つけているだけであり、脱税ではないと言う。彼らによると、すべての苦情は、会社ではなく、アメリカの制度に向けられ るべきであるという。さらに、会社は、2010年の納税額が少ないのは、ウォール街での金融危機の間に金融サービス部門が被った損失である320億ドルを 反映した結果であると説明する。しかし、GEは世界の250の地域で納税申告をしているが、それらの多くは、アメリカの税務当局を避けるために利益を留保 する低税率国である。

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