2011年10月7日金曜日

大金持ちのためのもう一つのルール


オフショアのシステムはますます好調である。世界貿易の半分以上は、タックスヘイブンを経由している。また、全銀行資産の半分以上、多国籍企業によ る海外直接投資の3分の1以上は、オフショアを通っている。約85パーセントの国際銀行業務および起債はユーロ市場で行われる。IMFは、小さな島々の金 融センターのバランスシートは、18兆ドル以上にのぼり、世界GDPのおよそ3分の1と等しいと推測されている。
2008年に米国会計検査院(GAO)は、アメリカ合衆国のトップ100の企業のうち、83社がタックスヘイブンに子会社を持っていると報告した。さらに、調査は、ヨーロッパの最大級の企業のうち、93社がオフショアの子会社を利用したことを示した。
タックスヘイブンとは、企業が正常な金融規制を回避できる地域と定義することができる。さらに、それらは、他の国との情報交換に協力することを個人が拒絶することができる秘密保護および取引環境を提供している。
また、こうした秘密主義の地域は、これらタックスヘイブンの活動から、自国自身の経済は保護している。このことは、彼らにもタックスヘイブンが有害であるということの暗黙の理解があることを意味する。
秘密主義の地域の最も重要な特徴は、地域の政治が、時には犯罪者をも含む金融サービスの利益に絡めとられており、オフショアモデルへの有力な政治的 反対がなくなっていることである。民主主義の過程において、反対意見によりこうした利益が害される危険は、ほとんど、あるいはまったくない。また、別の特 徴としては、金融サービス産業が地域経済のサイズと比べて大規模であるということにある。IMFは、2007年には、なんとイギリスがこのオフショアの定 義に触れるとしている。
シャクソンは、「利用可能な法的手段をすべて使用するオフショア操作の専門家」としてマードックの帝国を挙げる。エコノミストが1999年に調査した時は、ニューズ・コープは約6%しか税率を支払っていないとされた。
彼は、タックスヘイブンがどのように機能するか、バナナの商売を例にとって説明する。実際のバナナは、流通上、直接消費者に届けられる。しかし、会計上の文書の足跡はより遠回りとなる。
それは移転価格として知られる、共通の方策を通じたものである。
グループ内での取引価格を人為的に調節することによって、多国籍企業は、売り上げを低率課税のタックスヘイブンに付け、経費は税の控除ができる高税率国へ付けることができる。
バナナの例においては、税収は貧しい国から先進国へと移動する。開発途上国は毎年、企業の価格操作により、概算で1600億ドルもの損失を出していると言われている。
2006年のガーディアン紙の報告書では、イギリスで最大級のバナナ会社3社は、7億6000万ドルの販売をしているが、税金は約300,000ドルしか払っていないことが分かった。
2007年の会計検査院の研究では、英国最大級の企業のおよそ3分の1が2006年には全く税を納付していなかったことが分かった。
ロンドンのシティーはグローバルなオフショアのシステムの最重要部位である。シャクソンは、以下のようにシティーの変化を要約する。
「英国内の状況の変化を受け、シティーは入念で形式的な礼儀作法と、「してはいけないこと」の無言のルールがある管理された金融システム、そしてそ れを展開する大英帝国のジェントルマンクラブのような状況から、規制が緩和され、活気あり、イギリスの銀行によって支配され、新たにクモの巣のように広 がった、グローバルな金融センターに変化しました。」
シティーのオフショアのネットワークには3つの主たるの層がある。第一に、ジャージー、ガーンジーおよびマン島のような王室属領である。
これら3つの王室属領は、2009年の第2四半期にシティーへ融資した3320億ドルの資金経路となった。ジャージーの宣伝パンフレットは、自身に ついて、「ロンドン・シティーの延長」であると記述している。調査によると、これら3地域は、約1兆ドルの潜在的な租税回避資産を有していることが示され ている。
第2にイギリス領バージン・アイランズやケイマン諸島のような海外領土である。
ケイマン諸島は、世界第5の金融センターで、80,000社の登録企業があり、ニューヨーク市の銀行を上回る1兆9000億ドル預金残高を有する。 ケイマン諸島は、2008年、IMFに資本責任金は(預かり金および他の負債)、2兆2000億ドルと報告した。しかし、ポートフォリオの資産には、 7500億ドルだけしかない。この不一致は特に説明されず、明らかに深く疑わしいものだ。そして最後に、香港やシンガポールのような外部の国々がある。
これらいわば「衛星地域」のこうしたネットワークは様々な目的に役立つ。
第1に、シティーが国際的に移動する資本を引きつけることを可能にし、グローバルな展開を可能にする。
第2に、シティーはイギリスで禁止され、悪事として否定される取引をすることができる。
租税回避地はそれぞれ異なる種類の金融取引に特化している。バーミューダはオフショアの保険および再保険を引きつける磁石のようになっている。ケイマンは、ヘッジファンドが税と金融規制を回避するために、恵まれた場所である。

タックスヘイブンの起源は、オフショアの活動の新しい動きがロンドン・シティーで認識された50年代中頃までさかのぼることができる。当時、為替レートは固定されており、銀行は特定の目的以外には外貨を取引しないことになっていた。
しかし、ミッドランド銀行は商取引と関係がなかった米ドル預金を受け入れることにより、為替管理を破った。こうして、銀行が為替管理を踏み付け、ユーロ市場の始まりを示したときこそが、プロセスのスタートだった。
シャクソンは、オフショアのタックスヘイブンのはじまりは、カリブ海やチューリヒ、ロンドン・シティーを汚すような、スキャンダル的なものではないと主張している。
1959年の終わりまでには、約2億ドルの預金が存在し、1961年の終わりまでには、それは30億に達した。ユーロ市 場は急激に景気づき始めた。1970年までには、それは460億ドルになったと見積もられ、1975年までには、全世界の外貨準備高の規模を超えるように なったと考えられている。1980年までに、2兆6000億ドルに達し、1997年には、ほぼ90パーセントの対外融資がこの市場を経由するようになっ た。規制機関であるBISは、これらの市場規模を計算することをすでに諦めている。
60年代までに、米国の政策決定者は、ユーロ市場の影響を懸念するようになり、欧州の銀行の状況について議論するため に、連邦準備制度理事会はロンドンへ職員を派遣した。しかしながらこうした問題に取り組まず、ユーロドル市場の成長を保証するという点で、欧州の銀行の無 関心と、アメリカの銀行との利害は一致していた。
アメリカ政府は、外資を流入させる必要がある。そして、無税と匿名性はそれを引き付けるのである。そして、資本逃避という用語は次のことを示唆する。犠牲者、すなわち、資金を吸い取られる国は、本当の事件にならない限りは、資金を追跡することができないということである。
イギリスはすべての海外領土において、数年前に汚職疑惑に関連してタークス・アンド・カイコス諸島で起きた事件のように、何かまずいことが起きた場合、その責任を逃れるために十分な距離を置いている。

最後に、シンガポール、香港およびバハマのような独立国は、イギリスのグローバルネットワーク中の大きな部分を占めている。
さらに米国には、タックスヘイブンそれ自体の多層的なネットワークがある。犯罪が外国で行われた場合であれば、アメリカの銀行にその犯罪資金を預けることができるとも思われるのだ。
アメリカの最も大きな影響を受けたタックスヘイブンはパナマである。スタンダードオイルがアメリカの税を回避することを可能にするため、パナマは1919年に外国船の自国船籍登録を始めた。
1927年には、ウォールストリートの利害を受け、パナマが緩い会社法制を導入したことにより、オフショアの金融制度がこれに続いた。
同様に、アメリカでの重要な進展として、デラウェアでは、巨大なタックスヘイブンがアメリカで生まれることを意味する様々な立法がなされた。こうした規制緩和は、先進国、特にアメリカの最近の金融危機の根源と考えられる。


人気ブログランキングはこちら





0 件のコメント:

コメントを投稿